小説部門
日本作品
〇くっすん大黒 文春文庫 町田康 著
ここまで何の役にも立たない小説はなかなか無い。抱腹絶倒必至です。
〇さようなら、ギャングたち 講談社文芸文庫 高橋源一郎 著
実はこのタイトルは主人公の名前です。小説の自由さを感じる一冊です。
〇こちらあみ子 ちくま文庫 今村夏子 著
主人公を無視するかのように積み重ねられていくストーリーは圧巻。ちりばめられた伏線の回収の仕方に息を飲みます。
〇夏の流れ 丸山健二初期作品集 講談社文芸文庫 丸山健二 著
死刑執行を巡る担当刑務官と死刑囚の心の揺らぎを、抑制された筆致で描き出しています。他に短編が収録されています。
〇博士の愛した数式 新潮文庫 小川洋子 著
記憶が短時間しかもたない博士と、家政婦の私とその息子が紡ぎ出す歓びと悲しみに満ちた話が、透明感のある文体で書かれています。
〇珍品堂主人 中公文庫 井伏鱒二 著
骨董に取りつかれた人間たちが織り成す喜劇と悲劇。それらを軽妙な筆致で描き出しています。
〇TUGUMI 中公文庫 吉本ばなな 著
病弱で可憐で、それでいて性格のどこかねじくれたつぐみ。彼女と私が、小さな頃からいた海辺で、印象深いひと夏を過ごしたことを記した青春小説。
〇雪沼とその周辺 新潮文庫 堀江敏幸 著
雪沼と呼ばれる土地とそこに住む人の日常を描き出した作品です。大きな出来事はありませんが、静かで落ち着いた空気が作品の中に流れています。
〇日輪/春は馬車に乗って 岩波文庫 横光利一 著
表題作の他に短編が八篇収められています。個人的に面白かったのは『蠅』です。表題作よりも印象深く面白いと感じてしまいました。
〇壁 新潮文庫 安部公房 著
一般的な価値観を転倒し、新たな視点の世界観を作り出している作品です。風変わりな魅力が読者をひきつけます。
〇海と毒薬 新潮文庫 遠藤周作 著
太平洋戦争末期の米軍捕虜生体解剖事件を小説化した作品です。
〇告白 双葉文庫 湊かなえ 著
ある事件をきっかけに、憎しみの連鎖が起こり、その当事者たちの形を変えた告白が事件の全容を浮かび上がらせていきます。
〇山月記・李陵 岩波文庫 中島敦 著
狷介で高慢な詩人が虎へと変わり、自身の人生の後悔をたまたま通りがかった友人に告げる山月記など、中国古典を題材にした短編が多数収録されています。
〇最後の息子 文春文庫 吉田修一 著
閻魔ちゃんというオカマと、その家に転がり込んでいる僕が織り成す日常を、撮りためたビデオカメラを見ながら追っていく物語。
〇雪の練習生 新潮文庫 多和田葉子 著
三代にわたるホッキョクグマを主人公とした小説。風刺があり、どことなくユーモラスで、そして幻想的な雰囲気もある不思議な作品です。
〇ヘブン 講談社文庫 川上未映子 著
「いじめ」をテーマに、いじめをされる側といじめをする側の心、考え、行動を描いた作品です。この作品は英国のブッカー国際賞にノミネートされています。
海外作品
〇ドリアン・グレイの肖像 光文社古典新訳文庫 オスカー・ワイルド 著 仁木めぐみ 訳
美貌の青年ドリアン・グレイと彼に魅了され、その肖像を描いた画家バジル。またドリアン・グレイを退廃的な色に染め上げようとするバジルの友人ヘンリー卿。ドリアンはどう変わっていくのか、結末やいかに。
〇ハイファに戻って/太陽の男たち 河出文庫 ガッサーン・カナファーニー 著 黒田寿郎/奴田原睦明 訳
イスラエルとパレスチナの間で、現在進行形で起こっていることを描き出している作品です。現代アラビア文学を代表する傑作と言われています。
〇蠅の王 新訳版 ハヤカワepi文庫 ウィリアム・ゴールディング 著 黒原敏行 訳
少年たちを乗せた飛行機が、無人島に不時着し、初めはそこで気ままな生活していた彼らが、助けを待つまでの生活を巡って分裂していく姿を描き出しています。
〇大地1~4 新潮文庫 パール・バック 著 新居格 訳 中野好夫 補訳
小作農の主人公・王龍が働き者の妻をもらい、共に働き、家を富ませ、地主へとなっていく力強い姿とその子孫を描いている本です。特に第1巻がお勧めです。
〇一九八四年 新訳版 ハヤカワepi文庫 ジョージ・オーウェル 著 高橋和久 訳
科学技術を用いた全体主義体制の中で生きる主人公を、近未来を舞台に描き出している本です。ディストピア文学の金字塔です。
〇かもめのジョナサン 新潮文庫 リチャード・バック 著 五木寛之 創訳 ラッセル・マンソン 写真
他のカモメたちと違い、飛ぶことを極めようとしたジョナサンが到達した境地と、彼が周りのカモメに与えた影響が描かれています。他と異なることがどういうことなのか考えさせられる小説です。
〇朗読者 新潮文庫 ベルンハルト・シュリンク 著 松永美穂 訳
第二次世界大戦中とその後のドイツ。僕は自分の母親ぐらいの年齢の女性・ハンナと関係を持つ。が、ハンナはじきに姿を消し、再会した場所は戦争犯罪を裁く法廷だった。愛した人が人道に対する罪を犯していると知ったときの僕の行動と心情が細やかな表現で描き出されています。
〇帰れない山 新潮クレスト・ブックス パオロ・コニェッティ 著 関口英子 訳
私と友人のブルーノが、山に抱かれた生き方をし、成長していく姿を描いた小説です。山は二人にとって揺り籠のような場所でした。
〇月と6ペンス 新潮文庫 サマセット・モーム 著 金原瑞人 訳
株の仲買人だったストリックランドが妻子を捨て、突如として画家へと転身する。ゴーギャンをモデルにした、魅力的な物語が展開されます。
〇飛ぶ教室 光文社古典新訳文庫 エーリッヒ・ケストナー 著 丘沢静也 訳
つらいことがあっても、苦しいことがあっても、この小説を読むと何かいいことがあるのではと思わせてくれる作品。殺伐とした現代に忘れられた感情が込められています。
〇悲しみよ、こんにちは 新潮文庫 フランソワーズ・サガン 著 河野万里子 訳
プレイボーイの父とその娘が、夏のヴァカンスで経験する、それぞれの恋愛が描かれた小説です。優しい筆致から生み出される残酷な雰囲気が魅力的です。
〇グレート・ギャツビー 村上春樹翻訳ライブラリー スコット・フィッツジェラルド 著 村上春樹 訳
ニューヨークに越してきた私は、不思議な雰囲気と富を持つギャツビーにパーティーに招かれ、どこか彼に引き付けられていく。第一次世界大戦後の米国の興隆しながらも退廃した世相と、その中の人の繋がりのはかなさを描いた作品です。
〇タタール人の砂漠 岩波文庫 ブッツァーティ 著 脇功 訳
人は人生に目的や期待を持って生きる。それはかなえられる時もあれば、かなえられぬ時もある。目的や期待に縛られる人生は、死と共に終わりを告げる。それもまた一つの幸せなのかもしれない。淡々とした筆致によって、人生の不条理が描かれています。
〇走れウサギ 上・下 白水Uブックス ジョン・アップダイク 著 宮本陽吉 訳
ダメな夫婦の話で、ダメな妻が妊娠して大変なときに、ダメダメな夫が妻を置いてぼりにして不倫してしまうという、かなりドロドロな話ですが、作者の筆力からか、妙にさわやかな感じのイメージに話がまとめられています。
〇停電の夜に 新潮文庫 ジュンパ・ラヒリ 著 小川高義 訳
インド系の作家による短編集。表題作のほかに興味が引かれる短編が幾つか収められています。個人的なお勧めは、一番最後に収録されている『三度目で最後の大陸』。洗練された文章なのに、どこかコミカルな印象でした。
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